マイホームの購入や売却は、人生…
マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物の一つと言えるでしょう。
物件価格にばかり目が行きがちですが、実はそれ以外にも「諸費用」と呼ばれるさまざまなコストが発生します。
このマイホームの諸費用が一体いくらくらいかかるのか、その内訳や相場を事前に把握しておくことは、資金計画を立てる上で非常に重要です。
多くの方が、諸費用の目安が分からずに不安を感じたり、いざという時に現金が足りなくなったりするケースも少なくありません。
この記事では、マイホームの諸費用に関して、その具体的な内訳から新築・中古、戸建て・マンションといった物件ごとの相場、さらには計算のためのシミュレーション方法まで、徹底的に解説していきます。
また、諸費用を支払うタイミングや、住宅ローンに組み込む際の注意点、そして少しでも出費を安く抑えるための節約方法についても詳しくご紹介します。
税金や登記費用、仲介手数料といった専門的な項目も、分かりやすく説明しますので、これからマイホームの購入を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
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この記事で分かる事、ポイント
- マイホームの諸費用にはどのような種類があるか、その詳しい内訳
- 新築・中古・マンション・戸建てなど物件別の諸費用のおおよその目安と相場
- 諸費用の金額を自分で計算するためのシミュレーション方法
- 各種費用をいつ支払う必要があるのか、その具体的なタイミング
- 諸費用を少しでも安く抑えるための具体的な節約術
- 住宅ローンに諸費用を含めることのメリットとデメリット
- 見落としがちな税金や登記費用、保険料などの詳細
マイホームの諸費用はいくら?内訳と相場を徹底解説
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この章のポイント
- まず知りたい諸費用の内訳と種類
- 【新築・中古】物件別の諸費用相場
- 戸建てとマンションの費用の違い
- 諸費用を支払うタイミングはいつ?
- 概算がわかるシミュレーション方法
まず知りたい諸費用の内訳と種類
マイホームを購入する際には、物件の価格以外にもさまざまな費用がかかります。
これらを総称して「諸費用」と呼びますが、その内容は多岐にわたります。
資金計画を正確に立てるためにも、まずはどのような費用が含まれるのか、その内訳と種類をしっかりと理解しておくことが第一歩となります。
諸費用は、大きく分けて「税金」「住宅ローン関連費用」「登記関連費用」「その他」の4つに分類することができます。
それぞれのカテゴリーに含まれる具体的な費用項目を見ていきましょう。
税金関連
物件を購入し、所有権を得る過程で、いくつかの税金を納める必要があります。
代表的なものには、売買契約書に貼付する「印紙税」、不動産の所有権移転登記などにかかる「登録免許税」、そして不動産を取得したことに対して一度だけ課される「不動産取得税」があります。
また、毎年1月1日時点の所有者に対して課される「固定資産税」と「都市計画税」も忘れてはなりません。
これらは引き渡し時に日割りで精算するのが一般的です。
住宅ローン関連費用
ほとんどの方が住宅ローンを利用してマイホームを購入しますが、その際にも費用が発生します。
金融機関に支払う「融資手数料」、保証会社に支払う「ローン保証料」、そして住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)に貼付する「印紙税」が主なものです。
融資手数料やローン保証料は、金融機関やローンのプランによって金額が大きく異なるため、複数の金融機関を比較検討することが重要になります。
登記関連費用
購入した不動産が自分の所有物であることを法的に示すために、所有権の登記手続きが必要です。
この手続きは司法書士に依頼するのが一般的であり、その専門家への報酬として「司法書士報酬」が発生します。
登記手続きには、所有権移転登記(中古物件の場合)や所有権保存登記(新築物件の場合)、住宅ローンを組む際の抵当権設定登記などがあります。
その他
上記以外にも、さまざまな費用がかかります。
中古物件を購入する際に不動産会社に支払う「仲介手数料」は、諸費用の中でも大きな割合を占める項目の一つです。
また、住宅ローンを組む際に加入が義務付けられる「火災保険料」や、任意で加入する「地震保険料」も必要です。
新築マンションの場合は、将来の大規模修繕に備えるための「修繕積立基金」を最初に一括で支払うケースもあります。
これらの項目を一覧で確認し、自分の場合はどれが必要になるのかをリストアップしてみると良いでしょう。
- 印紙税(売買契約書・ローン契約書)
- 登録免許税(登記手続き)
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税(日割り精算分)
- 融資手数料(金融機関)
- ローン保証料(保証会社)
- 司法書士報酬(登記手続き)
- 仲介手数料(中古物件など)
- 火災保険料・地震保険料
- 修繕積立基金(新築マンションなど)
これらの諸費用の全体像を把握することが、マイホーム購入の成功への鍵となります。
【新築・中古】物件別の諸費用相場
マイホームの諸費用がどのくらいかかるのか、その相場は物件の種類によって大きく異なります。
特に、「新築物件」か「中古物件」かという違いは、費用の総額に直接的な影響を与えます。
ここでは、それぞれのケースにおける諸費用の目安となる相場を具体的に解説していきます。
一般的に、諸費用の総額は物件価格に対する割合で示されることが多いです。
新築物件の諸費用相場
新築物件の場合、諸費用の目安は物件価格の3%から7%程度と言われています。
例えば、4,000万円の新築マンションを購入する場合、諸費用はおおよそ120万円から280万円の範囲で見ておくと良いでしょう。
新築物件の諸費用の特徴は、中古物件に比べて仲介手数料がかからないケースが多いことです。
売主である不動産デベロッパーから直接購入する場合、仲介する会社が存在しないため、この手数料が不要になります。
仲介手数料は物件価格の3%程度になることもあるため、これが無いだけでも大きな差となります。
ただし、新築特有の費用として、水道加入金や、マンションの場合は前述の修繕積立基金などが必要になることがあります。
中古物件の諸費用相場
一方、中古物件の諸費用の目安は、物件価格の6%から10%程度と、新築物件よりも高くなる傾向にあります。
同じく4,000万円の中古戸建てを購入するケースで考えると、諸費用は240万円から400万円程度が必要になる計算です。
中古物件の諸費用が高くなる最大の理由は、「仲介手数料」が発生するためです。
個人が売主となっている中古物件は、不動産会社の仲介を通じて購入するのが一般的であり、その成功報酬として仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料の上限は法律で定められており、「物件価格の3% + 6万円 + 消費税」が一般的な計算式です。
4,000万円の物件であれば、約138万円もの金額になり、これが諸費用全体を押し上げる要因となります。
具体的な金額シミュレーション
ここで、物件価格4,000万円の例で、新築と中古の諸費用を比較してみましょう。
- 新築マンション(4,000万円)の場合:物件価格の5%と仮定 → 200万円
- 中古戸建て(4,000万円)の場合:物件価格の8%と仮定 → 320万円
このように、同じ価格の物件であっても、新築か中古かによって100万円以上の差が生まれる可能性があります。
もちろん、これはあくまで一般的な目安であり、利用する住宅ローンの種類や、物件の評価額、依頼する司法書士などによって金額は変動します。
物件探しの際には、物件価格だけでなく、諸費用がどのくらいになりそうかという視点も持って、不動産会社の担当者に概算を確認することが大切です。
戸建てとマンションの費用の違い
マイホームの選択肢として代表的な「戸建て」と「マンション」ですが、購入時にかかる諸費用においても、それぞれに特有の違いが存在します。
物件の構造や法的な扱いの違いが、費用の項目や金額に反映されるためです。
ここでは、戸建てとマンションの諸費用における主な違いについて解説します。
登記費用の違い
不動産登記にかかる費用は、戸建てとマンションで差が出やすいポイントです。
登記は「建物」と「土地」の両方に対して行われます。
マンションの場合、建物の一室(専有部分)の所有権と、土地の権利(敷地権)を一体として登記します。
土地は全戸の所有者による共有名義となるため、個々の持分は比較的小さくなります。
一方、戸建ての場合は、建物一棟と、その土地全体の所有権を登記することになります。
一般的に、土地の評価額はマンションの持分よりも戸建ての方が高くなる傾向にあるため、土地にかかる登録免許税は戸建ての方が高額になる可能性があります。
司法書士への報酬も、手続きの複雑さによって多少変動することがあります。
税金(固定資産税)の違い
購入後、毎年支払うことになる固定資産税にも違いが見られます。
固定資産税は、土地と建物のそれぞれに課税されますが、その評価額の算出方法や軽減措置の適用に違いがあります。
土地については、戸建ての方が広い面積を所有することが多いため、税額が高くなる傾向にあります。
建物については、マンションは鉄筋コンクリート造などの頑丈な構造が多いため、木造の多い戸建てに比べて法定耐用年数が長く、資産価値が下がりにくいと評価されます。
そのため、築年数が経過しても建物の固定資産税は戸建てほどは減少しない傾向があります。
新築の場合、マンションは3階建て以上の中高層耐火建築物として、固定資産税の軽減措置が5年間(長期優良住宅の場合は7年間)適用されるのに対し、戸建ては3年間(同5年間)と、期間に差が設けられています。
購入時に特有の費用
購入のタイミングで支払う諸費用にも、それぞれ特有のものが存在します。
新築マンションを購入する場合、多くのケースで「修繕積立一時金(修繕積立基金)」の支払いが必要になります。
これは、将来行われる大規模修繕工事に備えて、購入時に数十万円を一括で支払うものです。
一方、注文住宅で戸建てを建てる場合には、土地の状況によって「水道負担金(水道加入金)」が必要になることがあります。
これは、新たに公道から敷地内へ水道管を引き込むための費用です。
また、建売住宅ではなく注文住宅を建てる場合は、建物の設計や工事監理を依頼する建築士への支払いも発生します。
これらの違いを理解し、自分の希望する物件タイプではどのような費用が追加で必要になるのかを、あらかじめ不動産会社やハウスメーカーに確認しておくことが重要です。
諸費用を支払うタイミングはいつ?
マイホームの諸費用は、一度にまとめて支払うわけではありません。
購入のプロセスに合わせて、いくつかのタイミングに分けて支払う必要があります。
いつ、どのくらいの現金が必要になるのかを事前に把握しておくことは、スムーズな資金計画のために不可欠です。
ここでは、物件の申し込みから引き渡しまでの流れに沿って、諸費用を支払う主なタイミングを解説します。
1. 物件の売買契約時
購入したい物件が決まり、売主と合意に至ると、まず「不動産売買契約」を締結します。
このタイミングで必要になる費用の代表格が「手付金」です。
手付金は厳密には諸費用ではなく、物件価格の一部を前払いするものですが、現金で用意する必要があるため注意が必要です。
相場は物件価格の5%〜10%程度です。
そして、諸費用として「印紙税」が必要になります。
これは売買契約書に貼付する収入印紙の代金で、契約金額に応じて税額が決まります。
また、仲介会社を通じて物件を購入する場合は、ここで「仲介手数料の半金」を請求されるのが一般的です。
2. 住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)時
売買契約が無事に済んだら、次は金融機関と住宅ローンの契約を結びます。
これを「金銭消費貸借契約(金消契約)」と呼びます。
この契約時にも、ローン契約書に貼付するための「印紙税」が必要になります。
また、金融機関によっては、このタイミングで「融資手数料」の一部を支払うケースもあります。
どの費用がいつ必要になるかは金融機関の方針によって異なるため、事前の確認が欠かせません。
3. 物件の引き渡し(残金決済)時
諸費用の支払いが最も集中するのが、物件の引き渡し日です。
この日は「残金決済」とも呼ばれ、物件価格の残代金と、多くの諸費用をまとめて支払います。
具体的には、登記手続きを依頼する司法書士への報酬と登録免許税、融資手数料やローン保証料、火災保険料、そして仲介手数料の残金など、多岐にわたる費用の精算が行われます。
また、固定資産税・都市計画税の清算金もこの日に支払います。
これらの費用は、住宅ローンの融資実行額から支払われる場合と、別途現金で用意する必要がある場合があります。
特に、住宅ローンに諸費用を組み込まない場合は、数百万円単位の現金を準備する必要があるため、計画的な資金準備が求められます。
4. 物件の引き渡し後
物件の引き渡しが完了した後にも、支払わなければならない費用があります。
それが「不動産取得税」です。
不動産取得税は、物件を取得してから数ヶ月後(通常3ヶ月〜半年後)に、都道府県から納税通知書が送られてきて支払います。
忘れた頃に通知が来るため、あらかじめ納税資金を確保しておくことが大切です。
ただし、一定の要件を満たす住宅には大幅な軽減措置があるため、忘れずに申告手続きを行いましょう。
このように、支払いのタイミングは複数回に分かれています。
それぞれの段階でいくら現金が必要になるのか、不動産会社や金融機関に詳細な資金計画表を作成してもらい、しっかりと準備を進めることが重要です。
概算がわかるシミュレーション方法
マイホームの諸費用がどのくらいかかるのか、具体的な金額を把握するためには、シミュレーションを行ってみることが最も効果的です。
概算でも金額を把握できれば、より現実的な資金計画を立てることができます。
ここでは、自分で諸費用をシミュレーションするための基本的な方法について解説します。
ステップ1:物件価格と借入額を設定する
まずは、シミュレーションの土台となる情報を設定します。
検討している物件のおおよその価格と、住宅ローンで借り入れる予定の金額を決めましょう。
例えば、「物件価格4,000万円、住宅ローン借入額3,800万円」のように具体的な数字を設定します。
中古物件の場合は、仲介手数料の計算に物件価格が必要になりますし、住宅ローン関連費用は借入額を基に算出されるため、この設定が全ての基本となります。
ステップ2:各費用の計算式に当てはめる
次に、主要な諸費用項目を一つずつ計算していきます。
以下に代表的な項目の計算方法の目安を示します。
- 仲介手数料(中古物件の場合): (物件価格 × 3% + 6万円) + 消費税
- 印紙税(売買契約書): 物件価格に応じて1万円~3万円程度(軽減措置適用後)
- 登録免許税: (土地の固定資産税評価額 × 税率) + (建物の固定資産税評価額 × 税率)。税率は条件により異なりますが、概算では評価額の1%~2%程度で見ておくと良いでしょう。
- ローン保証料: 借入額や返済期間によりますが、借入額の2%程度が一般的。一括前払い方式の場合。
- 融資手数料: 金融機関により様々。借入額の2.2%(税込)などの定率型や、3万円~5万円程度の定額型があります。
- 火災保険料: 補償内容や建物の構造、地域によりますが、10年一括で15万円~30万円程度。
- 司法書士報酬: 10万円~15万円程度が目安。
ステップ3:具体例でシミュレーションしてみる
それでは、以下の条件で実際に計算してみましょう。
【条件】
・物件:中古戸建て
・物件価格:4,000万円
・住宅ローン借入額:3,800万円
・土地・建物の固定資産税評価額合計:2,500万円
【計算例】
- 仲介手数料: (4,000万円 × 3% + 6万円) + 10% = 138.6万円
- 印紙税: 1万円
- 登録免許税: 2,500万円 × 1.5%(仮) = 37.5万円
- ローン保証料: 3,800万円 × 2% = 76万円
- 融資手数料: 3,800万円 × 2.2% = 83.6万円
- 火災保険料: 20万円
- 司法書士報酬: 12万円
- 合計: 約378.7万円
このシミュレーション結果から、4,000万円の中古戸建てを購入する場合、約379万円の諸費用がかかる可能性があると予測できます。
これは物件価格の約9.5%に相当します。
オンラインシミュレーターの活用
自分で計算するのが難しいと感じる場合は、不動産情報サイトや金融機関のウェブサイトが提供している諸費用シミュレーターを活用するのも一つの手です。
これらのツールは、物件価格や借入額などを入力するだけで、必要な諸費用を自動で計算してくれるため非常に便利です。
ただし、あくまで概算であることは念頭に置いておきましょう。
最終的に正確な金額を知るためには、不動産会社や金融機関から正式な見積もりを取得することが不可欠です。
シミュレーションは、あくまで資金計画の第一歩として活用してください。
マイホームの諸費用で損しないための知識
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この章のポイント
- 諸費用を安く抑えるための節約術
- 住宅ローンに諸費用は含められる?
- 見落としがちな税金と登記費用
- 火災保険料や仲介手数料も忘れずに
- 【まとめ】マイホームの諸費用計画は早めに
諸費用を安く抑えるための節約術
マイホームの諸費用は、物件価格に比べれば少額に見えるかもしれませんが、総額では数百万円に上る大きな出費です。
この諸費用を少しでも安く抑えることができれば、その分を頭金に回したり、新生活の家具や家電の購入費用に充てたりすることができます。
ここでは、賢く諸費用を節約するための具体的な方法をいくつかご紹介します。
住宅ローンの選び方を工夫する
諸費用の中でも大きな割合を占めるのが、住宅ローン関連の費用です。
特に「ローン保証料」と「融資手数料」は、金融機関によって設定が大きく異なります。
ローン保証料が不要な住宅ローン(主にネット銀行など)を選ぶ、あるいは融資手数料が定額型のプランを選ぶことで、数十万円単位の節約につながる可能性があります。
金利の低さだけで選ぶのではなく、諸費用を含めた総支払額で比較検討することが、節約の重要なポイントです。
複数の金融機関に事前審査を申し込み、提示された条件をじっくり比較しましょう。
火災保険のプランを見直す
住宅ローンを組む際に加入が必須となる火災保険ですが、不動産会社や金融機関から提案されたプランにそのまま加入する必要はありません。
補償内容は自分で自由に選ぶことができます。
不要な補償(例えば、高台にある家で水災補償を手厚くするなど)を外したり、保険期間を調整したりすることで、保険料を抑えることが可能です。
複数の保険会社から見積もりを取り寄せ、内容と価格を比較する「相見積もり」を行うことを強くお勧めします。
仲介手数料の値引き交渉を試みる
中古物件の購入で発生する仲介手数料は、法律で定められているのはあくまで上限額です。
そのため、不動産会社によっては値引き交渉に応じてもらえる可能性があります。
必ずしも成功するわけではありませんが、例えば売買契約をスムーズに進める意思を示すなど、交渉の余地を探ってみる価値はあります。
また、売主が不動産会社である「売主物件」や、仲介手数料が無料または割引になる不動産会社を選ぶという選択肢もあります。
登記手続きを自分で行う(セルフ登記)
不動産の登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的ですが、実は自分で行うことも可能です。
これを「セルフ登記」と呼びます。
セルフ登記を行えば、司法書士に支払う10万円〜15万円程度の報酬を節約することができます。
ただし、手続きは非常に煩雑で、法務局に何度も足を運ぶ必要があり、専門的な知識も求められます。
特に、住宅ローンを利用する場合は金融機関が抵当権設定登記を確実に行うことを求めるため、セルフ登記を認めないケースがほとんどです。
現金一括で購入する場合など、条件が限られますが、選択肢の一つとして知っておくと良いでしょう。
これらの節約術をうまく活用することで、諸費用の負担を軽減することが可能です。
ただし、無理な節約は禁物です。
必要な補償を削ったり、信頼できる専門家への依頼をためらったりすることがないよう、バランスを考えて実行することが大切です。
住宅ローンに諸費用は含められる?
マイホームの諸費用は、原則として現金で支払うのが基本です。
しかし、総額で数百万円にもなる費用をすべて現金で用意するのは、簡単なことではありません。
そこで多くの方が検討するのが、「諸費用を住宅ローンに含めて借り入れる」という方法です。
近年、この諸費用込みのローンを取り扱う金融機関が増えています。
ここでは、諸費用を住宅ローンに含めることのメリットとデメリットについて解説します。
メリット:手元に現金を残せる
最大のメリットは、購入時に必要な自己資金を大幅に減らせることです。
諸費用の支払いに充てるはずだった現金を、予期せぬ出費に備えるための予備費として、あるいは子どもの教育資金や老後資金として手元に残しておくことができます。
特に、貯蓄はまだ少ないけれど、すぐにでもマイホームを購入したいという若い世代にとっては、大きな魅力となるでしょう。
これにより、購入のハードルが下がり、マイホーム実現のタイミングを早めることが可能になります。
デメリット:総返済額が増える
一方で、デメリットも理解しておく必要があります。
最も大きなデメリットは、借入額が増える分、毎月の返済額と利息の総支払額が増加することです。
例えば、300万円の諸費用を金利1.5%、35年ローンで借り入れた場合、毎月の返済額は約8,700円増え、総利息負担も約65万円増加します。
一時的に現金を用意する負担は減りますが、長期的にはより多くのお金を支払うことになるのです。
デメリット:担保割れのリスクが高まる
もう一つの重要なデメリットは、「担保割れ」のリスクが高まることです。
担保割れとは、住宅ローンの残高が、その物件の市場価値(売却価格)を上回ってしまう状態を指します。
物件価格に諸費用を上乗せして借り入れる(いわゆるオーバーローン)と、購入した瞬間から担保割れの状態になる可能性が高くなります。
この状態で、もし急な転勤などで家を売却しなくてはならなくなった場合、家を売ってもローンを完済できず、差額を自己資金で補うか、新たな借金を背負うことになりかねません。
利用する際の注意点
諸費用を住宅ローンに含めることを検討する際は、これらのメリット・デメリットを十分に比較衡量することが大切です。
利用できるのであれば、手元の現金をすべて使い果たしてしまうよりは、ある程度ローンに組み込んでキャッシュを残しておく方が賢明な場合もあります。
ただし、借入額が増えることのリスクを正しく認識し、将来の売却可能性や自身の返済能力を慎重に見極める必要があります。
また、金融機関によっては、諸費用ローンを利用すると金利が少し高くなる場合や、そもそも取り扱いがない場合もあります。
事前に複数の金融機関に相談し、自分たちのライフプランに最も合った方法を選択するようにしましょう。
見落としがちな税金と登記費用
マイホームの諸費用の中でも、特に専門的で分かりにくいのが「税金」と「登記費用」です。
金額が大きくなることもあり、仕組みを理解せずにいると、予想外の出費に慌ててしまう可能性があります。
ここでは、特に見落としがち、あるいは内容を誤解しがちな税金と登記費用について、詳しく解説していきます。
不動産取得税:忘れた頃にやってくる税金
不動産取得税は、その名の通り、土地や家屋などの不動産を取得した際に、一度だけ課される都道府県税です。
この税金の特徴は、物件の引き渡しが終わってから数ヶ月後に納税通知書が届くという点です。
購入時の慌ただしさの中で忘れてしまいがちなので、あらかじめ資金を確保しておく必要があります。
税額の計算方法は「固定資産税評価額 × 税率(原則4%)」ですが、新築・中古を問わず、住宅用不動産には大幅な軽減措置が設けられています。
例えば、課税標準となる固定資産税評価額から、一定額(新築の場合は1,200万円など)が控除されます。
この軽減措置を受けるためには、自分で都道府県税事務所へ申告する必要があります。
通常は司法書士が登記手続きの際に代行してくれることも多いですが、忘れずに確認しましょう。
登録免許税と司法書士報酬:登記にかかる2つの費用
不動産を購入すると、その所有権を法的に確定させるために「登記」を行います。
この登記手続きの際に発生するのが、「登録免許税」という国税と、手続きを代行する「司法書士への報酬」です。
この2つを混同しないように注意が必要です。
- 登録免許税: 登記の種類に応じて課される税金。所有権移転登記や抵当権設定登記など。税額は「課税標準額 × 税率」で決まる実費です。
- 司法書士報酬: 登記手続きを代行してもらうための手数料。司法書士事務所によって料金体系が異なります。
不動産会社から提示される見積もりでは、これらが「登記費用」として一括りにされていることが多いですが、内訳を確認することが大切です。
登録免許税も不動産取得税と同様に、住宅用の不動産には税率の軽減措置があります。
例えば、自己の居住用家屋の所有権移転登記の税率は、本則の2.0%から0.3%に引き下げられます(適用要件あり)。
これらの軽減措置を漏れなく適用してもらうためにも、信頼できる司法書士に依頼することが重要です。
固定資産税の精算金
固定資産税と都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者に対して課税されます。
そのため、年の途中で不動産の売買が行われた場合、売主が1年分を納税することになります。
そこで慣例として、物件の引き渡し日を境に、買主がその年の残りの日数分を「精算金」として売主に支払います。
この精算金も、残金決済時に支払う諸費用の一つとして見込んでおく必要があります。
これらの税金や登記費用は、軽減措置の適用有無で金額が大きく変わります。
自分が購入する物件が軽減措置の対象になるかどうか、不動産会社や司法書士に事前にしっかりと確認しておきましょう。
火災保険料や仲介手数料も忘れずに
マイホームの諸費用を考える上で、税金やローン関連費用と並んで重要なのが、「火災保険料」と「仲介手数料」です。
どちらも数十万円単位の出費となることが多く、資金計画に大きな影響を与えます。
それぞれの内容と注意点をしっかりと理解しておきましょう。
火災保険料:なぜ必要?相場は?
火災保険は、火災や落雷、風災、水災などの自然災害によって、建物や家財が損害を受けた場合に補償してくれる保険です。
住宅ローンを利用する場合、金融機関は融資の条件として、火災保険への加入を義務付けています。
これは、万が一火事で家がなくなってしまった場合でも、ローン債権を回収できるようにするためです。
保険料は、建物の構造(木造か、鉄筋コンクリートか)、所在地、補償内容、保険期間によって大きく変わります。
一般的に、燃えにくいとされるマンションの方が、木造戸建てよりも保険料は安くなります。
保険期間は最長で5年となっており、長期で契約するほど1年あたりの保険料は割安になります。
地震による損害は火災保険では補償されないため、別途「地震保険」に加入する必要があります。
地震保険は単独では加入できず、必ず火災保険とセットで契約します。
近年、自然災害が増加していることを考えると、必要な補償を吟味し、万が一の事態に備えておくことが非常に重要です。
前述の通り、複数の保険会社から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
仲介手数料:中古物件購入時の大きな費用
仲介手数料は、不動産会社の仲介によって中古物件や土地を購入した場合に、その不動産会社へ成功報酬として支払う費用のことです。
この手数料は、諸費用の中でも特に大きなウェイトを占める項目の一つです。
宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取れる仲介手数料には上限が定められています。
その速算式は以下の通りです。
- 物件価格が200万円以下の部分:5%
- 物件価格が200万円を超え400万円以下の部分:4%
- 物件価格が400万円を超える部分:3%
計算が複雑なため、一般的には「売買価格 × 3% + 6万円(+ 消費税)」という速算式が広く使われています(売買価格が400万円超の場合)。
例えば、物件価格が4,000万円の場合、仲介手数料の上限額は(4,000万円 × 3% + 6万円)× 1.10(消費税10%)= 138万6,000円となります。
この手数料は、通常、売買契約時と引き渡し時に半金ずつ支払うことが多いです。
なお、新築物件をデベロッパーなどの売主から直接購入する場合は、仲介会社が存在しないため、この仲介手数料はかかりません。
中古物件を検討する際は、この仲介手数料が必ず発生することを念頭に置いて資金計画を立てる必要があります。
【まとめ】マイホームの諸費用計画は早めに
これまで見てきたように、マイホームの購入には物件価格以外にも、さまざまな諸費用が必要になります。
その内訳は税金、ローン費用、登記費用、保険料、仲介手数料など多岐にわたり、総額は物件価格の数パーセントから、場合によっては10%近くにも達します。
このマイホームの諸費用を軽視していると、「いざ契約という段階で現金が足りない」といった事態に陥りかねません。
マイホームの購入を成功させるためには、物件探しと並行して、できるだけ早い段階から諸費用に関する計画を立てておくことが極めて重要です。
まずは、この記事で紹介したような諸費用の内訳や相場を把握することから始めましょう。
自分が検討している物件(新築か中古か、戸建てかマンションか)のタイプに合わせて、どのくらいの諸費用がかかりそうか、一度シミュレーションしてみることをお勧めします。
具体的な購入物件の候補が挙がってきたら、必ず不動産会社の担当者に諸費用の概算見積もりを依頼してください。
その見積もりを基に、自己資金でどこまでを支払い、どこからを住宅ローンに含めるのかを検討し、最終的な資金計画を固めていきます。
また、住宅ローンや火災保険の選び方、各種軽減措置の活用など、少しの工夫で諸費用を節約できるポイントも数多く存在します。
情報収集を怠らず、賢く選択することで、負担を少しでも軽くすることが可能です。
マイホームの購入は、多くの人にとって一生に一度の大きな決断です。
物件そのものの魅力だけでなく、こうしたお金の計画まで含めて、総合的に判断することが、後悔のない家選びにつながります。
この記事が、あなたの素晴らしいマイホーム探しの第一歩となれば幸いです。
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この記事のまとめ
- マイホーム購入には物件価格以外に諸費用が必要
- 諸費用の主な内訳は税金・ローン費用・登記費用・保険料など
- 新築物件の諸費用相場は物件価格の3~7%が目安
- 中古物件は仲介手数料がかかるため6~10%と高めになる
- 戸建てとマンションでは登記費用や固定資産税に違いがある
- 諸費用は契約時・ローン契約時・引き渡し時など複数回に分けて支払う
- 購入後に支払う不動産取得税も忘れないように準備が必要
- 物件価格や借入額を基に諸費用のシミュレーションが可能
- 住宅ローン選びや火災保険の見直しで諸費用は節約できる
- 仲介手数料が不要な物件を選ぶのも一つの節約術
- 諸費用を住宅ローンに含めることも可能だがデメリットも理解する
- ローンに含めると手元資金は残せるが総返済額は増える
- 税金の軽減措置を漏れなく活用することが重要
- 不動産会社に早い段階で諸費用の見積もりを依頼することが大切
- マイホームの諸費用計画は物件探しと並行して進めるべき