将来の暮らしを見据えたとき、多くの人が考えるのが住まいのバリアフリー化ではないでしょうか。
高齢者や車いすでの生活はもちろん、誰もが安全で快適に暮らせる家づくりは、現代の重要なテーマの一つと言えるでしょう。
しかし、具体的に何から始めれば良いのか、どんな設備が必要なのか、イメージを掴むのは難しいものですよね。
そこで役立つのが、バリアフリー住宅の展示場です。
実際にモデルハウスを見学し、専門家と相談することで、理想の住まいへの具体的な一歩を踏み出すことができます。
この記事では、バリアフリー住宅の展示場へ行く前に知っておきたい見学のポイントや、予約のコツ、当日に体験すべきこと、そして間取りや費用に関する注意点まで、あなたの家づくりを成功に導くための情報を網羅的に解説していきます。
リフォームを検討している方も、新築をお考えの方も、ぜひ参考にして、後悔のない住まいづくりのヒントを見つけてください。
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この記事で分かる事、ポイント
- バリアフリー住宅の展示場を見学する際の予約のポイント
- モデルハウスで実際に体験すべき具体的なチェック項目
- 高齢者や車いす利用者に配慮した間取りの考え方
- 手すりの設置や段差解消など安全性を高める工夫
- 信頼できるハウスメーカーの選び方と費用の目安
- 新築だけでなくリフォームを検討する際の相談のコツ
- 見学時に必ず確認したい住宅設備の詳細なチェックリスト
◆◆バリアフリー住宅の展示場で確認すべきポイント
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この章のポイント
- 見学予約の前に知っておきたいこと
- モデルハウスで体験できることとは
- 高齢者や車いすに配慮した間取り
- 手すりの設置や段差解消の重要性
- ハウスメーカー選びと費用の目安
見学予約の前に知っておきたいこと◆◆
バリアフリー住宅の展示場へ足を運ぶ前に、いくつかの準備をしておくと、見学がより有意義なものになります。
ただ何となく訪れるだけでは、得られる情報が限られてしまうかもしれません。
ここでは、見学予約をする段階で知っておきたいこと、準備しておきたいことを具体的に解説いたします。
現在の住まいの悩みや不満点をリストアップする
まず、なぜバリアフリー住宅に興味を持ったのか、その理由を明確にすることが大切です。
現在の住まいで感じている不便な点や、将来的に不安な点を具体的に書き出してみましょう。
例えば、「玄関の段差が気になる」「廊下が狭くて移動しづらい」「冬場の浴室が寒い」など、具体的な悩みが多いほど、展示場で確認すべきポイントが明確になります。
このリストは、当日ハウスメーカーの担当者に相談する際の重要な資料ともなるでしょう。
家族構成やライフプランを整理する
次に、家族全員の状況や将来のライフプランを整理しておくことも重要です。
現在は夫婦二人暮らしでも、将来的に親との同居を考えている、あるいは子どもたちが独立して部屋の使い方が変わる可能性があるなど、家庭の状況は変化していくものです。
誰が、いつ、どのようにその家で暮らすのかを想定することで、必要なバリアフリー設備や間取りの要件が見えてきます。
特に、介護が必要になる可能性も視野に入れ、介助スペースの確保や、将来的なリフォームのしやすさなども考えておくと良いでしょう。
見学予約時の伝え方のコツ
展示場へは、事前の予約が推奨されます。
予約をすることで、専門のスタッフが時間を確保してくれ、じっくりと話を聞くことができます。
予約の際には、単に見学したいと伝えるだけでなく、「バリアフリー住宅に興味がある」という点を明確に伝えましょう。
さらに、事前にリストアップした悩みや家族構成を伝えておくと、当日、より具体的な提案やアドバイスをもらえる可能性が高まります。
「車いすでの生活を想定したモデルハウスを見たい」「高齢の親と暮らすための間取りの相談がしたい」といった具体的な要望を伝えることが、スムーズな見学への第一歩です。
これらの準備を整えることで、バリアフリー住宅の展示場訪問が、単なる見学から、具体的な家づくりへのステップへと変わるはずです。
モデルハウスで体験できることとは◆◆
バリアフリー住宅の展示場にあるモデルハウスは、カタログやウェブサイトだけでは分からない、実際の暮らしを体験できる貴重な場所です。
五感をフル活用して、その住まいが本当に自分たちのライフスタイルに合っているかを確認しましょう。
ここでは、モデルハウスで具体的に何を体験し、何を確認すべきかをご紹介します。
実際の動線を確認する
間取り図を見るだけでは、実際の生活の動き(動線)はなかなかつかめません。
モデルハウスの中を実際に歩き回り、日常生活のシーンをシミュレーションしてみることが大切です。
例えば、以下のような動きを試してみましょう。
- 玄関からリビング、そしてトイレや寝室への移動
- キッチンで料理をしてダイニングテーブルへ運ぶ流れ
- 洗濯機から物干しスペースへの移動
- 夜中にトイレへ行く際の動線
これらの動きがスムーズに行えるか、廊下の幅は十分か、ドアの開閉はしやすいかなど、身体で感じることが重要です。
もし車いすでの生活を想定しているなら、実際に車いすを持ち込んで試させてもらえるか、事前に確認するのも良い方法でしょう。
設備の使い勝手を試す
バリアフリー住宅には、暮らしをサポートするための様々な設備が導入されています。
これらの設備は、実際に触って使ってみなければ、その本当の価値は分かりません。
例えば、キッチンの高さや収納の配置が自分の身長に合っているか、浴室の扉は開けやすいか、手すりの太さや位置は適切かなどを一つひとつ確認してください。
引き出しの重さ、スイッチの押しやすさ、水栓レバーの操作性など、細かい部分までチェックすることで、日々のストレスが軽減されるかどうかが分かります。
最新の設備に感動するだけでなく、自分にとって本当に必要な機能かを見極める視点も大切です。
空間の広さや明るさを体感する
図面上の帖数だけでは、空間の広がりや開放感を正確に把握することはできません。
天井の高さ、窓の大きさや配置によって、実際の体感は大きく変わるものです。
リビングでソファに座ってみて、窓からの光の入り方や外の景色の見え方を確認しましょう。
各部屋の明るさや風通しは、心地よい暮らしに直結する要素です。
また、収納スペースも重要なチェックポイントとなります。
扉を開けて奥行きや棚の高さを確認し、自分たちの荷物が十分に収まるか、そして出し入れしやすいかを具体的にイメージすることが、後悔しない家づくりにつながります。
高齢者や車いすに配慮した間取り◆◆
バリアフリー住宅を考える上で、間取りは最も重要な要素の一つです。
特に高齢者や車いすを使用する家族がいる場合、日々の生活のしやすさに直結します。
ここでは、安全性と快適性を両立させるための間取りのポイントについて詳しく見ていきましょう。
廊下と出入り口の幅を確保する
車いすがスムーズに通るためには、十分な幅の確保が不可欠です。
一般的に、車いすが直線的に通過するためには最低でも78cm以上の幅が必要とされていますが、これはあくまで最小限の数値です。
実際には、方向転換をしたり、介助者が横に付いたりすることを考えると、90cm以上の有効幅があると安心です。
特に、廊下が曲がる箇所や、部屋の出入り口はスペースにゆとりを持たせることが求められます。
モデルハウスでは、メジャーを持参して実際の幅を計測し、車いすでの移動をシミュレーションしてみることをお勧めします。
生活動線を短くシンプルにする
高齢になると、長い距離を移動することが負担になる場合があります。
そのため、日常生活で頻繁に行き来する場所は、できるだけ近くに配置するのが理想的です。
例えば、寝室、トイレ、洗面所、リビングを隣接させることで、移動の負担を大幅に軽減できます。
いわゆる「回遊動線」を取り入れ、行き止まりをなくすことも、移動のしやすさや介助のしやすさに繋がります。
特に平屋は、階段の上り下りがないため、バリアフリーの観点からは非常に優れた間取りと言えるでしょう。
トイレと浴室のスペースを広く取る
トイレや浴室は、介助が必要になる可能性が高い場所です。
そのため、介助者が一緒に入れるだけの十分なスペースを確保することが重要になります。
トイレは、便器の横に車いすを寄せられるスペースや、介助者が立つスペースを考慮して設計する必要があります。
浴室も同様に、洗い場を広く取り、介助用の椅子を置くスペースや、浴槽への出入りをサポートするスペースを確保することが求められます。
出入り口は、開き戸よりも引き戸の方が、開閉時にスペースを取らず、車いすでの出入りもしやすいためおすすめです。
これらのポイントを念頭に置きながらモデルハウスを見学することで、自分たちの家族にとって最適な間取りのヒントが得られるはずです。
手すりの設置や段差解消の重要性◆◆
家の中での転倒事故は、高齢者にとって大きなリスクとなります。
安全な住環境を整える上で、手すりの設置と段差の解消は、最も基本的かつ重要な対策です。
バリアフリー住宅の展示場では、これらの設備がどのように設置され、どのような効果をもたらすのかを具体的に確認することができます。
手すりの役割と適切な設置場所
手すりは、単に体を支えるだけでなく、移動の際のガイドになったり、立ち座りの動作を助けたりと、様々な役割を果たします。
手すりが必要となる主な場所は以下の通りです。
- 玄関: 靴の着脱や上がり框の上り下りの際に体を支えます。
- 廊下: 長い廊下での歩行を補助し、ふらつきを防ぎます。
- 階段: 安全な昇降のために不可欠です。
- トイレ: 便器からの立ち座りをスムーズにします。
- 浴室: 滑りやすい場所での転倒を防ぎ、浴槽への出入りを安全にします。
モデルハウスでは、手すりの太さや形状、材質を実際に握って確かめてみましょう。
滑りにくい素材か、握りやすい太さかなど、自分の手に馴染むものを選ぶことが大切です。
また、設置されている高さが、家族の身長に合っているかも重要なチェックポイントになります。
家の中のあらゆる段差をなくす
わずか数センチの段差でも、高齢者や車いす利用者にとっては、つまずきや転倒の原因となり得ます。
バリアフリー住宅では、家の中の段差を完全になくす「フルフラット設計」が基本です。
特に注意したいのが、各部屋の出入り口の敷居や、リビングと和室の境目、そして洗面所や浴室の出入り口です。
これらの場所に段差がないか、徹底的に確認しましょう。
もし段差が残っている場合でも、スロープを設置することで解消できる場合があります。
モデルハウスでは、床材の切り替え部分がスムーズに処理されているか、車いすのキャスターが引っかからないかといった細部まで見ておくと良いでしょう。
スロープの設置と勾配の確認
玄関アプローチなど、屋外の段差を解消するためにはスロープの設置が有効です。
しかし、スロープは勾配が急すぎると、かえって危険になることがあります。
建築基準法ではスロープの勾配は1/8以下と定められていますが、自力で車いすを操作する場合や、介助者が楽に押せる勾配を考えると、1/12以下の緩やかな勾配が望ましいとされています。
展示場にスロープが設置されている場合は、実際に上り下りを体験し、その角度が安全で使いやすいかどうかを体感することが重要です。
また、表面の素材が滑りにくいか、雨の日でも安全かといった点も確認しておくと、より安心です。
ハウスメーカー選びと費用の目安◆◆
理想のバリアフリー住宅を実現するためには、信頼できるパートナーとなるハウスメーカー選びが欠かせません。
また、家づくりには当然ながら費用がかかります。
バリアフリー住宅の展示場は、複数のハウスメーカーを比較検討し、資金計画の相談もできる絶好の機会です。
バリアフリー住宅の実績が豊富なメーカーを選ぶ
ハウスメーカーと一言で言っても、デザイン性の高い家が得意な会社、コストパフォーマンスに優れた会社など、その特徴は様々です。
バリアフリー住宅を建てるなら、やはりその分野での実績が豊富なメーカーを選ぶのが安心です。
展示場のスタッフに、これまでの施工事例や、バリアフリー設計に関する専門知識について質問してみましょう。
高齢者や障がいを持つ方の住まいに関する資格(福祉住環境コーディネーターなど)を持つスタッフがいるかどうかも、一つの判断基準になります。
複数のモデルハウスを見学し、各社の提案内容や対応を比較することで、自分たちの要望をしっかりと形にしてくれるメーカーが見つかるはずです。
坪単価だけで判断しない
家づくりの費用を考える際、多くの人が参考にするのが「坪単価」です。
しかし、この坪単価だけでハウスメーカーを比較するのは注意が必要です。
なぜなら、坪単価に含まれる工事の範囲や仕様は、メーカーによって異なるからです。
例えば、あるメーカーでは標準仕様の設備が、別のメーカーではオプション扱いになっていることも少なくありません。
バリアフリー設備(手すり、スロープ、床材の変更など)が標準仕様に含まれているのか、それとも追加費用が必要なのかを明確に確認することが重要です。
最終的な総額で比較検討するためにも、初期段階で詳細な見積もりを依頼することをお勧めします。
補助金や減税制度について相談する
バリアフリー住宅の建築やリフォームには、国や地方自治体から補助金が出たり、税金の優遇措置が受けられたりする場合があります。
これらの制度は、資金計画を立てる上で非常に大きな助けとなります。
しかし、制度の内容は複雑で、年度によって変更されることも多いため、個人で全てを把握するのは大変です。
ハウスメーカーの担当者は、こうした制度に関する知識も豊富です。
自分たちが利用できる補助金や減税制度がないか、積極的に相談してみましょう。
適切なアドバイスをもらうことで、予想以上に費用を抑えられる可能性もあります。
バリアフリー住宅の展示場は、家を見るだけでなく、お金に関する不安を解消する場としても活用できるのです。
◆◆バリアフリー住宅の展示場を賢く活用する方法
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この章のポイント
- リフォームを検討中の方への相談窓口
- 玄関やトイレで見るべきポイント
- キッチンや浴室のチェックリスト
- 将来を見据えた寝室と収納計画
- 理想のバリアフリー住宅の展示場を見つけよう
リフォームを検討中の方への相談窓口◆◆
バリアフリー住宅の展示場は、新築を考えている人だけのための場所ではありません。
現在の住まいをより安全で快適な空間にするための「バリアフリーリフォーム」を検討している方にとっても、非常に有益な情報収集の場となります。
ここでは、リフォームを視野に入れている方が展示場をどのように活用すればよいか、そのポイントを解説します。
最新のバリアフリー設備を実物で確認
リフォームの魅力は、最新の設備を導入できる点にあります。
例えば、昇降機能付きの便座、またぎやすい高さのユニットバス、ワンタッチで操作できる水栓など、カタログだけでは分かりにくい設備の使い勝手を、モデルハウスで実際に試すことができます。
「手すりを付けたいけれど、どんな種類があるのだろう」「床材を滑りにくいものに変えたいけれど、質感はどう違うのか」といった疑問も、実物を見ながら比較検討することで解消されるでしょう。
最新の設備に触れることで、自分たちのリフォーム計画の具体的なイメージが膨らみます。
部分的なリフォームの相談も可能
「家全体をリフォームするのは大掛かりすぎるけれど、まずはトイレと浴室だけでもバリアフリーにしたい」といった、部分的なリフォームの相談ももちろん可能です。
展示場のスタッフに、現在の住まいの間取り図や写真を見せながら相談すると、より的確なアドバイスがもらえます。
例えば、「この場所に手すりを付けるなら、壁の補強工事が必要かどうか」「このドアを引き戸に変えることは可能か」といった専門的な質問にも答えてくれるでしょう。
リフォームの専門部署を持つハウスメーカーも多いため、経験豊富なスタッフからプロの視点での提案を受けることができます。
リフォームの費用と工期の目安を知る
リフォームを考える上で、最も気になるのが費用と工期ではないでしょうか。
展示場では、希望するリフォーム内容を伝えることで、おおよその費用感や工事にかかる期間の目安を教えてもらうことができます。
複数のハウスメーカーに同じ条件で相談し、見積もりを比較することで、適正な価格を知ることにも繋がります。
また、リフォームの場合も、新築同様に補助金や減税制度を利用できるケースがあります。
どのような制度が適用される可能性があるのか、忘れずに相談してみましょう。
バリアフリー住宅の展示場をリフォームのショールームとして活用することで、理想の住まいへの近道が見つかるはずです。
玄関やトイレで見るべきポイント◆◆
玄関とトイレは、毎日必ず使う場所であり、バリアフリー化の重要性が特に高いスペースです。
展示場のモデルハウスを見学する際には、デザインや広さだけでなく、安全性と使いやすさに関わる細部までしっかりとチェックしましょう。
玄関のチェックポイント
家の顔である玄関は、安全な出入りのための工夫が求められます。
チェック項目 | 確認するべきポイント |
---|---|
アプローチとポーチ | 外部からのアプローチに段差はないか。スロープが設置されている場合、勾配は緩やかで滑りにくい素材か。雨よけの庇(ひさし)は十分な大きさか。 |
ドアの種類と幅 | 開き戸よりも、少ない力で開閉でき、車いすでも出入りしやすい引き戸が望ましい。ドアの有効開口幅は80cm以上あるか。 |
上がり框(かまち)の高さ | 段差は低いほど良い。理想は10cm以下。式台(踏み台)やベンチが設置されていると、座って靴の着脱ができて便利。 |
手すりと照明 | 上がり框の昇降や靴の着脱時に体を支えるための縦手すりが設置されているか。足元を照らす照明や、人感センサー付きライトがあると夜間も安心。 |
土間のスペース | 車いすやベビーカーを置いても、人の通行の妨げにならない十分な広さがあるか。 |
トイレのチェックポイント
プライバシーが保たれるべきトイレは、誰にとっても使いやすく、安全な空間であることが求められます。
特に、介助が必要になった場合を想定した設計が重要です。
- スペースの広さ: 車いすで回転できるスペース(直径150cm程度)や、介助者が横に立てるスペースが確保されているか。
- 出入り口のドア: 玄関同様、引き戸や折れ戸が望ましい。万が一中で人が倒れた場合でも外から開けられる構造だとさらに安全。
- 手すりの位置: 便器からの立ち座りを補助するL字型の手すりや、姿勢を保つための可動式の手すりが適切な位置に設置されているか。
- 便器の高さ: 高齢者や車いす利用者が移乗しやすいように、少し高めの便座や、昇降機能付きの便座が設置されているか。
- その他: 緊急時に外部に知らせるための呼び出しボタン、暖房設備、操作しやすいリモコンの位置なども確認しましょう。
これらのポイントを一つひとつ自分の目で見て、実際にドアを開け閉めしたり、手すりを握ったりして、使い勝手を体感することが、後悔のない選択に繋がります。
キッチンや浴室のチェックリスト◆◆
キッチンや浴室といった水回りは、日々の家事や身体のケアを行う重要な場所です。
バリアフリーの観点からは、使いやすさはもちろんのこと、事故を防ぐための安全への配慮が不可欠となります。
展示場では、以下のチェックリストを参考に、細部まで確認していきましょう。
キッチンのチェックリスト
料理は、毎日の楽しみの一つでもあります。
年齢を重ねても、あるいは車いすを使いながらでも、安全に楽しく料理ができるキッチンが理想です。
- ワークトップの高さ: 自分の身長や、車いすに座った状態での作業に適した高さか。高さが調節できるタイプのキッチンもある。
- シンク下のスペース: シンク下がオープンになっていると、座ったままでも膝がぶつからずに作業ができる。
- コンロの種類: 火を使わないIHクッキングヒーターは、火災のリスクが低く、掃除もしやすいため安全性が高い。
- 収納の形式: 高い場所にある吊戸棚は物の出し入れが大変。手の届きやすい引き出し式の収納が中心になっているか。昇降式の吊戸棚も便利。
- 水栓の形状: シングルレバー式やタッチレス水栓など、少ない力で操作できるものが望ましい。
浴室のチェックリスト
一日の疲れを癒す浴室は、リラックスできる空間であると同時に、家庭内で事故が起こりやすい場所でもあります。
転倒やヒートショックを防ぐための工夫がされているか、しっかり確認しましょう。
特に、冬場の入浴を想定したチェックが重要です。
- 出入り口の段差とドア: 洗面脱衣室との段差がなく、フラットになっているか。ドアは開閉スペースを取らない引き戸や折れ戸が理想。
- 床材: 濡れても滑りにくい素材か。水はけが良く、乾きやすい床材はカビの発生も抑えられる。
- 手すりの設置: 浴槽への出入り、洗い場での立ち座り、浴室内の移動など、必要な場所に適切な形状の手すりが設置されているか。
- 浴槽の形状と高さ: 浴槽の縁が低く、またぎやすい高さになっているか。浴槽内にステップや手すりがあると、より安全に出入りができる。
- 暖房・換気設備: 冬場のヒートショック対策として、浴室暖房乾燥機が設置されているか。湿気を排出しカビを防ぐための換気機能も重要。
- 水栓とシャワー: 温度調節がしやすく、急な温度変化が少ないサーモスタット式水栓か。シャワーヘッドの高さが変えられるスライドバーも便利。
これらのチェックリストを手にモデルハウスを回ることで、見落としがちなポイントにも気づくことができ、より具体的で現実的な家づくりの計画を立てることが可能になります。
将来を見据えた寝室と収納計画◆◆
住まいは、建てた時が完成ではなく、そこに住む家族と共に変化していくものです。
特に寝室や収納は、将来のライフスタイルの変化を見越して計画することが、長く快適に暮らすための鍵となります。
バリアフリー住宅の展示場では、現在だけでなく、10年後、20年後も暮らしやすい住まいのヒントを見つけることができます。
可変性のある間取りを考える
子どもが独立した後や、親との同居、あるいは介護が必要になった場合など、家族の形は変わっていきます。
そのような変化に対応できるよう、将来的に間取りを変更しやすい設計になっているかを確認しましょう。
例えば、最初は広い一部屋として使い、将来は壁を設置して二部屋に分けられるような構造は、非常に柔軟性が高いと言えます。
また、1階に寝室として使える部屋を確保しておくことも重要です。
年齢を重ねて階段の上り下りが負担になった際に、生活の全てが1階で完結する間取りは、安心して暮らし続けるための大きなポイントとなります。
ベッドサイドのスペースと動線
寝室で最も重要なのが、ベッド周りの環境です。
ベッドの片側だけでなく、両側からアクセスできるスペースがあると、ベッドメイキングや掃除がしやすくなります。
さらに、将来的に介護が必要になった場合、介助者がスムーズに動けるスペースとしても役立ちます。
また、夜中にトイレに行く際の動線も確認しておきましょう。
ベッドからトイレまでの間に障害物がなく、足元を照らすフットライトが設置されていると、夜間の転倒リスクを大幅に減らすことができます。
コンセントの位置や数も重要で、電動ベッドや医療機器を使用する可能性も考慮して、ベッドの頭側に複数設置されているかを確認すると良いでしょう。
使いやすい収納の工夫
収納は、多ければ良いというものではありません。
どこに、何を、どのように収納するかが重要です。
バリアフリーの観点からは、物の出し入れがしやすいことが第一条件となります。
- ウォークインクローゼット: 中を歩いて移動できるため、車いすでも利用しやすい。ハンガーパイプや棚の高さを調節できるタイプだと、さらに便利。
- 低い位置の収納: 高い場所にある天袋などは、高齢になると使いづらくなります。腰から目の高さまでのゴールデンゾーンに、使用頻度の高いものを収納できるスペースが確保されているか。
- 引き出しと扉: 開き戸よりも、軽い力で開閉できる引き出しや引き戸タイプの収納が望ましい。
モデルハウスの収納を実際に開け閉めしてみて、その使い勝手を体感し、自分たちの持ち物の量を考えながら、最適な収納計画を練ることが大切です。
理想のバリアフリー住宅の展示場を見つけよう◆◆
これまで、バリアフリー住宅の展示場を見学する際の様々なポイントについて解説してきました。
準備から当日のチェック項目、そして将来を見据えた計画まで、考えるべきことは多岐にわたります。
しかし、これら一つひとつの確認作業が、家族全員が末永く、安全で快適に暮らせる住まいを実現するための大切なステップとなるのです。
バリアフリー住宅の展示場は、単に家という「モノ」を見る場所ではありません。
そこは、未来の暮らしを体験し、専門家のアドバイスを受けながら、家族の夢を形にしていくための「コト」を始める場所です。
最新の設備に触れ、考え抜かれた間取りを歩き、温かみのある空間を肌で感じることで、カタログだけでは得られない多くの気づきがあるはずです。
そして、何よりも重要なのは、自分たちの目で見て、手で触れ、納得するまで質問することです。
今回の記事でご紹介したチェックリストを片手に、ぜひ一度、お近くのバリアフリー住宅の展示場へ足を運んでみてください。
きっと、あなたの理想とする住まいづくりの素晴らしいヒントが見つかることでしょう。
家族の笑顔があふれる、最高の住まいを実現するために、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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この記事のまとめ
- バリアフリー住宅の展示場訪問前には現在の住まいの悩みをリストアップする
- 見学予約時にはバリアフリー住宅希望の旨を明確に伝える
- モデルハウスでは実際の生活動線をシミュレーション体験する
- 設備の使い勝手は実際に触って操作してみることが重要
- 高齢者や車いす利用を考え廊下や出入り口は幅広く設計する
- 生活動線は短くシンプルにし平屋も選択肢に入れる
- トイレや浴室は介助スペースを考慮した広さを確保する
- 手すりは玄関や廊下、トイレ、浴室など必要な場所に設置する
- 家の中の段差をなくすフルフラット設計が基本となる
- ハウスメーカーはバリアフリー住宅の実績で選ぶと安心
- 費用は坪単価だけでなく総額と標準仕様の内容で比較する
- 利用可能な補助金や減税制度について専門家に相談する
- リフォーム検討者も最新設備やリフォーム費用の相談に展示場を活用できる
- 玄関やトイレ、キッチン、浴室は安全性と使いやすさの細部をチェックする
- 寝室や収納は将来のライフプランの変化に対応できる可変性を重視する